偉大な人が死んだ、記念日。
興味も無く、気にする予定も無かった私。
・・・しかし、最近は少し違う。
カレンダーに赤ペンで丸をつけ、一日、一日と近づく度に斜線を入れる。
人が死んだ日を楽しみにするのは、少し可笑しいけれど。
私はその日が楽しみであり、緊張もしていた。
網谷 天見(あみや あまみ)、高校2年生。
現在、青春真っ最中!
中学の卒アルでは端っこでメガネをかけ、俯きぎみに写真に写り、暗い雰囲気を出しているが・・・。
高校デビューってヤツ。
スカートを短くしてみたり、化粧の勉強してみたり。
さすがにブランド物のバックには手が出ない貧乏娘だけど・・・。
そこそこモテてるんだな、コレが。
「あっ!天見ちゃん〜おはよ〜!」
「うん、おはよー!」
クラスの男子の呼びかけに答えつつ、私は机にカバンを乗せ、席に着く。
「ねぇねぇ、天見。・・・明日、どうするの?」
隣の席の麻美が悪戯な笑みを浮かべつつ、私に声をかけた。
今日は2月13日。・・・明日は――バレンタインデー。
「えへへ。今年こそ恵吾(けいご)君に渡すんだぁ」
「きゃぁーーー!!頑張って!私、絶対応援するから!」
「うん!見ててね。私、絶対恵吾君のハートをガジッとGETするんだから!」
恵吾君。同じクラスの男子。
中学3年から同じクラスで、入学先も同じだった男の子。
最初は全然気にしてなんか無かったのだけど・・・最近、少しカッコイイなぁと思い始めて。
・・・気が付いてたら、好きになってました。きゃぁー言っちゃった!
でも、実は全然喋った事が無いんです。・・・こう、恥ずかしくて心臓がバクバクしてそのまま死んでしまいそうな感じ。
恵吾君に喋りかけようとすると、頭が真っ白になって、言葉が出なくなって、脚も動かなくなって・・・そのまま。
結局、喋りかけられずじまい。
で、でも!今年のバレンタインデーにはこの想いをぶつけるって決めたんだ。
ちゃんと、新年の初詣でお祈りしたし。500円も奮発したんだから、叶えろよコノヤロォ。
顔はダラダラとやけたまま、授業はあっという間に過ぎ、放課後になる。
ふふふぅん♪私には「スペシャル☆マニュアル」がある。
凄く、凄く甘いチョコが出来る特別なレシピだ。
綺麗なラッピングの仕方も教わったし、コレだけあればOK!
後はメッセージカードを書いて、入れて・・・それと、あれと―――。
家へ帰る帰路では、私の頭の中では妄想でいっぱいで、恥ずかしさのあまり電柱を蹴ったり、手持ちのバックにきゃぁーと抱きついたり。
・・・中々、はしゃいでいたと思う。
だけど。
すごく単純に、私には最大の山場が残っていた。
――チョコレート作り。
「えぇーと、如何すればいいんだっけ?」
とか。
「あっ!?間違って焦がしちゃった。・・・どうしよう。まっいっか☆」
とか。
「・・・・これって、煎餅だよね」
とかとか。
とにかく失敗続き。なんでこんなにうまくいかないの!?
叫んで、チョコを焼くオーブンの鉄板に手が当たり、火傷。
踏んだり蹴ったりだった。
それと、自分のお菓子作りの才能の無さに、絶望した。
・・・・お小遣いをはたいて、いいやつを買うか。
その時の私は、ラッピングが途中のボロボロのチョコレートを置いたまま、足早にコンビニに行ったのだった。
・・・まぁ、その時は目の前の事で手がいっぱいだったわけで。
「・・・こっちのほうが可愛いかな?いや・・・恵吾君はこっちの方が好きかな・・?」
買った後、新しくラッピングすれば問題ない。
私って頭がいい!
家に帰ると、ウチの母親がカンカンに怒っていた。
キッチンがグチャグチャに汚れていたからだろう。
だが、今の私はそれはちゃんと耳に入っておらず、聞き流すのみだった。
そして、チョコを買った私は安心を仕切って、そのまま買ったチョコを机の上に置いたままフロに行ってしまった。
2月14日。バレンタイン当日。
・・・ゆっくりと開く目蓋。
・・・・・・・あれ?
「ち、遅刻!!?」
そう、遅刻。朝のHR真っ最中の時間帯。
「ねぇ!!おかぁさん!チョコってどこだっけ!?」
「・・・チョコ?あぁ、アレね。キッチンに置いてあるわよ」
・・・キッチン?
少し引っかかる物があるものの、キッチンにあった綺麗にラッピングされた箱を掴み取り、母親の声に見送られ、全速力で走り出した。
・・・遅すぎた。出遅れた。
チョコは出来れば朝の、人が居ない時間帯に渡したかった。
なぜなら、恵吾君は朝早く、そして放課後はすぐにかえってしまうからだ。
・・・・朝だったらベストだったのに。
生憎私は、放課後まで待たなくちゃいけないようだ。
「・・・あれ、天見。こんな高そうなチョコ、どうしたのかしら?」
天見の自宅で、その母親が不思議そうに首をかしげた・
そして放課後。
私は見事、恵吾君の帰ろうとする背中を止め、通学路途中で二人、向き合って立っていた。
・・・そこまでは上出来だった。
だが、そこまでだった。
「・・・・・何?天見さん?」
眠たげな、どこか迷惑そうな目で私を見る恵吾君。
私の顔は真っ赤になり、中々言葉がつむげない自分が情けないくて泣きだしそうだった。
「・・・・・・・天見さん?」
私は頑張ったじゃないか。なんども練習したじゃないか。
あんなに頑張って化粧の勉強して、あんなに頑張って勉強して。
美味しいチョコレートが作れるレシピの雑誌を探して・・・。
いや、チョコは作れなかったけど・・・・。
兎にも角にも頑張ってきたのだ。
今だ!言うんだ天見!!今言わないで何時言うんだ!
「あ・・・あの!」
「ん?」
「・・・・コレ!食べてください!!」
ずっと後ろでもじもじさせていた指で、チョコレートを渡す。
・・・・あれ、そういえば・・・私はこんな箱に入れただろうか?
「あのさぁ、俺・・・・甘いの苦手なんだけど?」
「えっ?」
溜息に似た吐息を漏らしつつ、私からチョコが入った箱を貰った恵吾君。
「・・・・・?」
ラッピングを外し、中身をみた恵吾君の眉が少しだけ釣り上がった。
「あっ!それ、!?」
・・・私の失敗作のチョコレートだった。
やばいやばいやばいやばいやばい!!!
やばいってそれ!!
頭の中では静止の声が反響するが、混乱のあまり喉で言葉がつっかえて出ない。
恵吾君はグニャグニャの形の異物(一様、ハートのつもり)を一枚手に取り、薄い表面見た。
右手を出すも、恵吾君は見てない。
・・・・薄いチョコを口に運び―――
――パキッ
固い音が響いた。
・・・やば、よりにもよって、焼きすぎたヤツだ。
恵吾君は表情を変えず、もう半分ほど口に運び、パリパリと固い音を立てながらも無言で租借する。
今、私はその場で卒倒しそうだった。
だって、私が料理ベタな事が知られたら・・・・。
「・・・・美味いよ」
「へ?」
目が点。驚きに口が半開き。
「苦くて硬くて、香ばしくて」
「え、えぇ!?」
そ、それって失敗じゃないの!?
「俺、ビターチョコの方が好きなんだ」
そう言って、恵吾君は私に、私の見たことの無い笑みを浮かべた。
私は頬を赤らめた。・・・き、気絶していいですか?
も、もう幸せです・・・・・・。
「ん、・・・カード?」
って、ちょっと待った!!それって、それって!!
「・・・・『恵吾君、大好き。付き合ってください』・・・」
・・・・・場に気まずい雰囲気。空気。おもーい沈黙。
そ、それは・・・ボツになったカードであって・・・。捨てたと思ったに・・・。
泣きそうだった。恥ずかしくて死にそうだった。
「うん。いいよ」
「へっ?」
今度こそ、私は気絶した。
顔を真っ赤にして。
幸せそうな笑みを浮かべて。
後書き。
はい、ミヤタです。
初めて書きました、こんなの。
もう、恥ずかしくて死にそうです。コッチが。
次はもう少し大人しい物を書きたいなぁと思いつつ。
今日はココで筆をおいてみます。
では、失礼します。